小説レビュー

[作品紹介]東野圭吾/パラドックス13 ナミヤ雑貨店の奇蹟 祈りの幕が下りる時 夢幻花 白銀ジャック 麟の翼 カッコウの卵は誰のもの 流星の絆 ダイイング・アイ 幻夜 赤い指

私(てげ子)が好きな作家・東野圭吾さんの作品を紹介します。

彼の作品はほとんど読んでいるのですが、書いたのは下の作品のみ。

今後、増やしていければ、と思っています。

ひがしの けいご 大学卒業後、エンジニアとして働きながら小説を執筆。デビュー作「放課後」で第31回江戸川乱歩賞を受賞する。第52回日本推理作家協会賞を受賞した「秘密」は99年に広末涼子主演で映画化される。第134回直木賞受賞作「容疑者Xの献身」の映画化では、TVドラマ「ガリレオ」(07)に引き続き天才物理学者・湯川を福山雅治が演じた。「探偵ガリレオシリーズ」に並ぶ人気を誇る「加賀恭一郎シリーズ」はTVドラマ「新参者」(10)、スペシャルドラマ「赤い指」(11)、映画「麒麟の翼 劇場版・新参者」(12)と阿部寛が主演を務める。「白夜行」は06年にドラマになり、10年に映画が公開された。その他映画化された作品に「変身」(05)、「手紙」(06)、「さまよう刃」(09)、「夜明けの街で」(11)など多数。ーー映画.comより

13秒間に何が起こったのか? この世に残された十三人の運命は?

13時13分からの13秒間、地球は“P‐13現象”に襲われるという。

何が起こるか、論理数学的に予測不可能。

政府は対策本部を立ち上げても、実際には何もできない。

なぜ、その現象が起こるのかも全く分からないのだが、その瞬間、人間がいなくなってしまったのだ。

一人になった冬樹は他の人間を捜し求め、兄の誠哉を含む12人と巡り会う。

生き残ったのは13人だけなのか。他の人間はいったい何処へ消えたのか? 
次々と襲ってくる地震。大雨、割れる地面。枯渇してゆく食べ物。インフルエンザのウィルスが13人の命を脅かす。

生き延びるためにはどうすればいいのか?

「世界が変われば善悪も変わる。人殺しが善になることもある。これはそういうお話です」と著者は言う。

13人しかいなくなった世界では、食べ物は寿司屋やコンビニ、マンションの冷蔵庫からも調達するが、普通の世界ならば窃盗だ。

しかし、この場合生き延びるためには、それは善になる。

どこかで見たような設定もいくつかあるが、この物語の意義は細かいエピソードやストーリーではなく、既成の価値観をひっくり返すことなのかもしれない。

自然にリーダー格になった誠哉は、常に一人でも多く生き延びるための判断をしようとするが、弟の冬樹は感情が先に立ってそれができない。

そもそも、生き延びることが善なのか、という問題もある。

かつての価値観は全く通用しない。次第に命を落としたり、分裂したりしていく13人。

大いなる矛盾を抱えたまま、世界が崩壊し始める…。

人間は何気なく暮らしているようで、実は毎日、幾つもの選択をして生きている。

普通の世界なら、何を選んでも急に何かが変わるということは無いけれど、極限世界ではちょっとした選択ミスが命に関わる。

パニックの中で人間の本性が試される。そんな人間の心理も、面白く読めた。今までの東野圭吾作品とは少し傾向が違うが、作家のこんなチャレンジも、興味深い。

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講談社
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ナミヤ雑貨店の奇蹟

盗難車に乗って逃走した3人組が逃げ込んだ廃屋は、かつて店主が悩み相談に答えていた『ナミヤ雑貨店』だった。

時が止まったかのようなその場所に、なんと33年前の相談の手紙が投げ込まれた。

それは、病気の恋人の看病を取るか、選手としての練習を取るかに悩む、あるオリンピック候補選手からのものだったが、放っておけずに3人が返事を書くと、また直ぐに返信の手紙が投函されて…。

なぜか時が経つのが遅いナミヤ雑貨店。

浪矢さんの遺言により、33回忌に1日だけ復活した悩み相談の日。

33年前と今を繋ぐ雑貨店には、様々な悩み相談の手紙が投げ込まれた。

そして、3人は自分たちの罪と、ナミヤ雑貨店の繋がりの真相を知る…。

時空を超えて奇蹟を生む、感動の物語だ。

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KADOKAWA
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祈りの幕が下りる時

『麒麟の翼』に続く加賀恭一郎シリーズの最新作。

加賀の母親が家を出たわけやその後の生活、臨終にも駆けつけなかった父親との経緯も描かれている。

謎の連続殺人事件の陰には、実は30年前の加賀の母親の失踪も絡んでいた。

子供時代の加賀が背負ったものや、加賀の強さの原点が見える、加賀恭一郎ファンには嬉しい1冊だ。

いろいろあって、加賀は母と別れ、父ともギクシャクしたまま成長したが、今回の殺人事件の背景にも、父と娘の悲しい愛があった。

原発や原発作業員が描かれていることから、著者のメッセージも感じられる。

単なる謎解きではなく、望まずに犯罪者になってしまった人間たちの、どうしようもない絶望と、それでも生きようとする姿に、胸を打たれる。

夢幻花

江戸時代まではあったけれど、今ではこの世に存在しないという黄色いアサガオ。

梨乃は、花を育てるのが好きな祖父周治のために、彼が育てた花の写真をブログで紹介していた。

ある日突然、周治が何者かによって殺された。

祖父がブログに写真を掲載することを固く禁じた黄色い花が消えているのに気がついた梨乃は、ブログで写真を公開し、情報を得ようとするが、接触してきたのは蒲生洋介という男だった。

そして弟の蒼太とも知り合うが、どうやらこの事件は、毎年朝顔市に行く蒲生家の秘密とも関係があるらしい。

幾重にも連なる謎が、最後はパズルのピースがはまるように収束していく。

原発問題も交えて、今を考えさせられる。

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白銀ジャック

単行本が出て、しばらくしてから文庫版が出版されるのが今までの通常の流れだったが、なんと本書はいきなり文庫で大ヒットしたものを、1年後にまさかの単行本化!

いきなり文庫は、他社でも最近ちらほら見かけるし、単行本と文庫と電子出版、同時発売なんていうのもあったけれど、後から単行本化するのは業界初かも。それも、本書の魅力故に出来る離れ業かもしれないが。

「我々は、いつ、どこからでも爆破できる」。

年の瀬のスキー場に届いた脅迫状。

人質はスキー場にいる全ての人々だ。スキー場の経営陣は、今後の利益を考えて警察に通報できない。

雪上を乗っ取った犯人の動機は金か? それとも復讐か? 類い希なスキーテクニックを持つ犯人との戦いのゆくえは…。

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麒麟の翼

人気の加賀恭一郎シリーズも、もう第9弾。

阿部寛主演でテレビドラマ化された前作『新参者』に続いて、日本橋が舞台だ。

『新参者』同様、いとこの松宮とコンビを組んで捜査に当たる。

日本橋の麒麟像にもたれるようにして死んだ男には、ナイフが刺さっていた。

刺された場所から、わざわざ麒麟の像まで歩いた被害者の意図は?

容疑者は意外に早く見つかった。被害者の財布とカバンを持っていた若い男だ。

しかし、男は警察官から逃げようとしてトラックにはねられ、意識不明の重体。自白が取れないまま捜査は進むが、容疑者は本当に、犯人なのか?

加賀は、一人、捜査を続けていた。次第に明らかになる事実。

謎解きというよりも、ここでは「信じる」ということがキーワードになっているように思う。

親子や恋人との愛情と絆が、面白く読みやすい中にも、鮮やかに描かれている。

加賀の亡くなった父親との関係も、事件と共に浮かび上がってくる。

誰が犯人なのかはさほど重要ではない。

そこに至る登場人物たちの心の動き。変化する思い。信じる心。そんな人と人との絆が、物語に奥行きを与えている。

エンターテインメントとして楽しめるのはもちろんだ。日本橋の麒麟の像を見に行きたくなる。

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講談社
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プラチナデータ

『カッコウの卵は誰のもの』いらい、著者はDNAに興味があるらしい。最初から読者を引きつけるつかみのうまさはさすがだ。

DNA捜査で犯人の年齢、身長、体重、性格、顔までほぼ正確に分かるようになった近未来。

本人でなくとも、犯人に近しい身内のDNAサンプルがあれば、そこから絞り込むことも出来るというものだ。

犯罪防止を目的として、国民のDNAの管理が可能となるDNA法案が国会で可決され、検挙率も格段に上がった。

しかし、それでも検索システムにひっかからない連続婦女暴行殺人事件が発生した。

「NOT FOUND」、NF13と名づけられた事件は、何の手がかりもないまま、暗礁に乗り上げた。そして、NF13による新たな事件が…。

同じ頃、DNA捜査システムの開発者である天才少女・蓼科早樹と、その兄・耕作までもが、徹底したセキュリティーに守られた病院の中で殺された。

監視カメラに写っていない侵入者。現場に残された毛髪からは、警察庁特殊解析研究所主任・神楽龍平のDNAが検出された。驚く神楽。冤罪を晴らすため、神楽は逃亡する。

最初からDNA捜査に疑念を抱いていた刑事・浅間が真相を追う。

どうやら、蓼科兄弟が殺されたのは、『プラチナデータ』のためらしいと分かるのだが…。

科学は本当に信じられるのか? データはウソをつかないのか?

国民の全てがDNAで管理されたら、犯罪の抑制になる。

また、もしも犯罪が起こっても、直ぐに犯人を逮捕できるという理想の元、DNA解析を進めてきた神楽が、DNAに裏切られる様は興味深い。

心もまた、すぐに騙されてしまうのだけれど。

一貫して科学に振り回されることのない泥臭い刑事・浅間や、管理されることから逃げて自給自足の生活を送るチクシらに助けられ、成長していく神楽に共感を覚える。

カッコウの卵は誰のもの

カッコウは「託卵」を行う種として有名だ。

つまり、子どもを自分では育てず、ホオジロやモズの巣に卵を産んで育てさせるのだ。

その際、卵の親はカッコウだろうか? 卵を育てたホオジロやモズだろうか。

本書では、DNAが鍵になる。

スポーツ遺伝子なるものが存在し、それを調べれば、才能のある選手を早く発見することが可能だというのだ。

スキーの元日本代表・緋田の娘・風美はスキーヤー。

妻は風美が2歳になる前に自殺。

緋田は、風美に惜しみない愛情を注いできたが、ある日、妻の遺品から、妻は自分の留守中に流産していたことを知る。

それでは風美の出生は?

そんな中、緋田と風美の遺伝子を調べさせて欲しいという男が現れる!

謎がいくつも交錯するなか、最後はほろりとさせられる。

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光文社
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流星の絆

ハヤシライスが評判の洋食屋『アリアケ』で、経営者夫妻が惨殺された。

小学生の功一、泰輔、静奈の三人兄弟が、ペルセウス流星群を見に、夜中に家を抜け出していた間のことだった。

次男の泰輔は犯人らしい男を目撃していたが、結局捜査は進展しなかった。

兄弟は施設に預けられ、十四年の歳月が流れた。

肩を寄せ合って生きてきた兄弟だが、功一と静奈が次々とだまされたことをきっかけに、三人は詐欺師になっていた。

静奈の美貌を武器に、男をだまして金を引き出すのだ。その三兄弟が、最後の大物ターゲットとして選んだのは、レストランチェーン『とがみ亭』の御曹司、戸神行成。

目標は一千万円。それを最後に足を洗う予定だったが、泰輔が偶然目にした行成の父親は、なんとあの日に目撃した男!

しかも、『とがみ亭』のハヤシライスは、『アリアケ』とまったく同じ味だった!

目的を詐欺から復讐へと変更した兄弟。

さまざまな方法で、警察の目が『とがみ亭』オーナー・戸神政行へ向くよう、細工をする。

次第に犯人を追い詰めて行っているかに見えたが、静奈はいつしか、戸神行成を愛してしまっていた…。

最初から、ぐいぐいと読者を引っ張ってゆく筆力はさすが。

後半、どんでん返しの末に、張り巡らされた伏線が一気につながる。

愛する両親を殺され、お互いだけを頼りに生きてきた兄弟が、詐欺師としてしか生きられなかったのかと切ないが、『百夜行』や『幻夜』の冷酷に徹したヒロインと違って、共感もできる。

警察はそんなに甘くないのでは? とやや気になった所はあるが、感動のラストに救われる。

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講談社
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ダイイング・アイ

バーテンの雨村は、ある日、客の男に襲われた。

一命はとりとめたものの、記憶の一部をなくしてしまう。

犯人は、雨村が起こした交通事故で死亡した被害者の夫だった。

これは復讐だったのか?

だが、事故から時間がたっているのに今になってなぜ?

しかも事故は複合事故で、加害者はもう一人いたのに、どうして雨村だけが襲われたのか?

犯人が自殺してしまったために、真相が分からない。雨村の消えた記憶も、まさに交通事故に関することだった。

雨村の周囲で、不可思議な事が続く。不思議な魅力をたたえた女が現れ、雨村を誘う。一緒に暮らしていた雨村の恋人は失踪した。

どうやら、全て例の交通事故と関わりがあるらしいのだが、記憶のない雨村には分からない。雨村は、失われた自らの過去を追う。

本作品が雑誌に連載されてから十年近くたつそうだが、交通事故はますます悲惨になっている。

突然、命を奪われた者と家族の悲しみは癒えることがないのに。

そうしたら、こんな事もあるかもしれないと思ってしまう。

怖い話だ。

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幻夜

『白夜行』の続編だが、『白夜行』を読んでいなくとも楽しめる。

突然起きた阪神淡路大震災のさなか、突発的に殺人を犯してしまった青年、雅也と、それを目撃した女、美冬。

女はなぜか、雅也の犯行の証拠を消してくれた。

しかしそれは、雅也にとっては殺人犯になるよりも恐ろしい現実の始まりだった。

悪魔のように人の心を見透かし、美貌と肉体で男を操って目的を遂げてゆく、美しい女。

あまりにも現実離れしているが、美冬に操られて次々と犯行を重ねてしまう雅也には、共感できる部分も多い。

究極のエンタテインメントとして、分厚い文庫が一気に読める。

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赤い指

直木賞受賞後第一作。構想六年の書き下ろしで、デビュー作『放課後』から数えて六十作目に当たる、記念すべき作品だという。

ミステリーといっても犯人捜しではない。

ある平凡な家庭で中学生の息子が引き起こした殺人事件を軸に、家族とは何かを考えさせる物語になっている。

事なかれ主義のサラリーマンの父親。夫に対する愛が無く、夫の身内とのつきあいを拒み、一人息子を溺愛する母親。認知症の祖母。学校ではいじめられ、家で引きこもりになっている中学生の息子。

そういう家族を平凡と言っては違和感があるが、今やさほど珍しくない家庭かもしれない。

つまり、この殺人事件はどこででも起こりうるということだ。

事実、嫁と姑は永遠のテーマだし、幼児性愛による殺人や少年犯罪が多発して、現代は病んでいる。

小説の世界だけれど、一人一人の心理描写がうまく、こんなこともありそうという気になる。

嘘をついて息子の犯罪を隠蔽しようとする夫婦だが、そこへ名刑事、加賀恭一郎が現れる。

静かに、だが確実に嘘のほころびを解いてゆく加賀。

ラスト、思いもよらない展開で、一見平凡な家族の仮面が一気にはげる。

そこに見えたのは、長い間隠されてきた家族の深い愛でもあった。

さらに冷え切ったかに見えた加賀と父親との関係にも、思いもよらぬ展開が…。

どんでん返しに次ぐどんでん返し。

期待を裏切らない、秀逸な作品だ。

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