
河本千奈ちゃん(3)が駐車場に止められた通園バスの車内におよそ5時間にわたって取り残され、熱中症で死亡した事件。
保護者説明会が開かれ、父親と思われる声が周囲の涙を誘い、過呼吸で合計13人が緊急搬送される事態になった。
その音声の内容とは?当日送迎バスを運転していた増田立義理事長の人物像は?
保護者説明会と記者会見
2022年9月5日、静岡県牧之原市静波にある認定こども園「川崎幼稚園」では5日、河本千奈ちゃん(3)が駐車場に止められた通園バスの車内におよそ5時間にわたって置き去りにされ、熱中症で死亡した。
牧之原市の最高気温は30.5℃だったが、千奈ちゃんの体温は40℃まで達していた可能性があるという。
この日は園の理事長が送迎バスを運転し、補助として派遣社員の女性が同乗していたが、確認を怠った。
いつもの運転手が突然欠勤となり、他の運転手にも打診したが都合がつかず、理事長が運転することになったという。
こども園は7日午前10時から保護者説明会を開き、午後3時からは、増田立義理事長や杉本智子副園長が記者会見を開いた。

その会見で増田理事長は、6日に千奈ちゃんの遺族と面会したことを明らかにし、その席で遺族から求められ「廃園に賛成する」という内容を紙にしたためたという。
廃園にするかどうかは近く行われる県と市の特別監査の結果を待って判断する考えを示した。
記者会見では理事長が千奈ちゃんの名前をちなつちゃんと間違えるなど、理事長に誠意や真剣さが感じられないと見た人たちも多く、Twitterなどでは多くの批判が上がった。
説明会には約100名の保護者が参加し、千奈ちゃんの父親とみられる音声がテレビで公開され涙を誘ったが、保護者7名、保育士6名の合計13名が過呼吸に陥り、説明会は11時半ごろ中止された。
父親とみられる音声の内容 保護者説明会で

「水筒の中に満タンに入れたもの。それも全部飲み干し、自分で上の服を全部脱いで裸になって…」
ここで、悲鳴のような複数の声が響き渡る。
「最後にバスを降りるから長く乗ってないといけないけど、それでも楽しいの?と聞いたら『うん、楽しい』って」
「今まで…アプリで…連絡を怠ったことは一度もありませんでした。一度も欠席で連絡をしなかったことはありませんでした」
「担任は欠席ではないと聞くと、『あ、本当だね、おかしいね』で終わりました。千奈がいないよという報告を受けているのに無視します。(登園後の)9時50分び出欠のシールを貼るというのがあります。その時にも、そうだったと思い出してくれれば。警察にも話を聞いて、その時は生きていたと聞きました」
ここで異変が起こる。
保護者7人と保育士6人の計13人が救急搬送されたのだ。
興奮して、集団心理も働き、いわゆる「過呼吸」になったようだ。
最前列にいた保護者の1人が倒れ、連鎖して他の人たちも倒れたという。
説明会はこうして1時間半ほどで中止となった。
理事長
千奈ちゃんが亡くなった日に送迎バスを運転した増田立義理事長は、文春によれば次のような人物だという。
「園長になると聞いた時は、『あいつが園長? 大丈夫なのか?』と思いました。昔からの知人はみんな心配していましたね。あいつの父親は、幼稚園の他にもお茶の工場を経営する金持ちで、いわば立義(増田立義園長)はボンボン。子供の頃からズボラな性格だったので、水戸黄門の『うっかり八兵衛』ならぬ『ええからげん(=いい加減)八兵衛』と呼ばれていました。そんな性格が災いしたのか、まさかこんな事故が起こるとは……」(増田園長の知人)
出典:文春オンライン
「事故を聞いたとき、率直なところ『やってしまったな』と思いました。立義(増田園長)の父親は海軍兵学校の出身で、予科練の帽子を被り、竹刀を片手に『親を大事にしろ』『いじめはダメだ』と子供たちを厳しく指導していました。一方の立義はボンボン気質。性格は親父とは正反対で、芯が全くない。口癖は『俺は知らない』『そんなことは言ってない』。いい加減な性格だから、子供の頃は『ええからげん八兵衛』と呼ばれていました」
出典:文春オンライン
2002年に川崎幼稚園の園長に就任した増田園長は、近隣の幼稚園を買収するなど経営拡大に熱を上げていた。だが手を広げすぎるあまり、肝心の子供の扱いや園の管理がなおざりになるのではないかという懸念の声は少なくなかった。
出典:文春オンライン
なぜこんな悲劇が起きたのか
千奈ちゃんはあと10日ほどで4歳の誕生日を迎えようとしていた。
かわいい盛りの千奈ちゃんが、なぜ死ななければならなかったのか。
同園は今回の事故の原因を分析し、4つのミスを記者会見の場で指摘した。
- 名前・人物の確認をしなかった
- バスに残された園児がいないかチェックの決まりがなかった
- 出欠の最新情報を確認しなかった
- 担任が保護者に連絡しなかった
そのとおりだが、なぜもっと早くにそれができなかったのか。遅すぎる。
と言うのも、同様の事故が1年前にも起きていたからだ。
昨年7月、福岡・中間市の「双葉保育園」で5歳だった倉掛冬生(くらかけ・とうま)ちゃんが送迎バスに取り残され、熱中症で死亡した事故だ。

国は保育所や幼稚園などに、出欠情報の共有や登園時の人数確認のダブルチェックなどを徹底するよう求める通知を出していたが、冬生ちゃんが死亡した事故の教訓は生かされなかった。
1年前にこうした事故が起きたばかりなのに、危機感を持たなかった認定こども園「川崎幼稚園」の全職員の意識の低さが問題だ。
他人事にしか思わないから、こうした事故(事件)は繰り返される。
保育園や幼稚園などの職員は、子どもの命を預かっているのだという自覚をはっきり持って日々の仕事に臨んでほしい。
最近、こうした事故を防ぐため、園児に送迎バスのクラクションの鳴らし方を教えている園が増えているというが、良いことだと思う。
対策は講じすぎて悪いことはない。
命は還らないのだから。
市営の市内周遊バス「いとちゃんミニ」で置き去り

これだけ報じられたのに、またもやバスに子供を置き去りにする事故が発生した。
今度は沖縄だ。
沖縄県糸満市は2022年9月22日、市営の市内周遊バス「いとちゃんミニ」で9月16日、小学生1人を車内へ置き去りにする事案が発生したと発表。
小学生は16日午後4時12分に乗車したが、受託会社の運転手が誤って児童が降りるはずのバス停で降車させずに運行を続けた。
バスは午後5時2分ごろ発着点の北波平営業所に到着乗客したが、運転手は児童の有無を確認せずに施錠した。
置き去りにされた児童は居眠りをしていて起きると車内には誰もおらず、しかも乗降ドアには鍵が掛かっていたため一時パニックに陥った。
しかし気を取り直した小学生は、持ってていた携帯電話で母親に連絡。
母親の指示でクラクションを鳴らしたが、誰も気付いてくれない。
そこで自分の判断で窓を開けて、そこから下車したという。
午後5時10分ごろ、近くにいた別の運転手に無事保護された。